絶望のススメ
世のなかには一定数、「納得しないと前に進めない」というタイプの人がいます。
このタイプの人は、「とりあえずやってみる」「言われたことをそのままやる」ことが苦手です。
たとえば昔、数学で「◎◎の定理」なんてものを習っても、「なんでそれがそうなるのか?」が理屈として分からないと、いまいちピンとこなくて定理を覚えられない生徒がいましたが、まさしくそのタイプです。
けっして頭が悪いわけじゃないのに、要領がよくない。どちらかと言うと不器用なんですよね。
そのかわり、理屈として覚えてしまうと、その後の進化スピードはすごく速い。
「なるほど、そういうことか!」が分かれば、目覚ましい勢いで突き進んでいきます。
仕事においてもそうです。
「なぜそうするのか?なぜ今それが重要なのか?」が腑に落ちて納得できればがんばれるのですが、「つべこべ言わずに、とにかくやれ!」と命令されても、モヤモヤがつのって思わず反発したくなるのが、このタイプです。
納得しないと前に進めないタイプの特徴
このタイプは、ほかにも
- 完璧主義である
- 往々にして考えすぎる。しかし、考えずにはいられない
- ものすごく他人に気をつかう
- いつも疲れている気がする
- まずは自分で何とかしようと頑張る
- 自分を責めたり、追いこんだりするのがクセになっている
という特徴があります。
なんで分かるか?それは、私もこのタイプの人間だからです。笑
さて、このタイプの人は、何か苦しみや悩みを抱えたとき、基本的に自分でなんとかしようとします。
これまで、私の個人セッションを受けにこられた方で、このタイプに当てはまる方は、ほぼ全員が「自分の限界ぎりぎり」までがんばってから来られていました。
つまり、「もうこれ以上は無理」な状態になってしまっているんです。
限界点すら自分で納得したい
どうして、「もうこれ以上は無理」な状態になるまで、がんばってしまうのでしょう?
それは、「納得しないと前に進めない」という、生来の気質が影響しています。
トコトンまでやってしまうのです。
トコトン自分でやりきって、「もうこれ以上は自分ではムリだ」「他人に頼らないとムリだ」と納得してからでないと、ひとに頼れないのです。
もし、悩んでいる最中で「もういいや、悩むのや~めた」とサクッと切り替えられる柔軟さがあったり、ひと晩寝ればそれでオールOK!という根っからの楽天さがあれば、ここまで苦しむことはありません。
なので、彼女たち(彼ら)は考えます。
「この、トコトン悩んでしまう性格が悪いんじゃないか?」
「考えすぎるから、苦しみが増すんじゃないか?」
と。
苦悩を性格や気質のせいだと考えて、性格を変えよう、思考法を変えよう、もっと気楽に生きられる人間になろう、と思いつくのです。
性格・考え方を変えようとする努力は、ことごとく失敗する
彼女たち(彼ら)は、「性格の矯正」を試みたり、「柔軟な考え方、楽天的な性格」を身につけようとがんばります。
心理学の本を読んでみたり、自己啓発的なセミナーを受けてみたり、スピリチュアルな方法を試してみたり。etc.
でも、うまくいきません。
なぜか?
それは、「納得できない」からです。
- どうして苦しみが生まれるのか?
- どうして私はクヨクヨ悩んでしまうのか?
- どうして他の人にはできることが私にはできないのか?
こういった「そもそもの根本的なこと」が、理屈として分からないと、前に進めないのです。
このタイプの人は、「分かりたい」のです。「納得したい」のです。
苦しみたくて苦しんでいるのではありません。苦しみの原因を分かりたいから、苦しんでいるのです。
悩みたくて悩んでいるのではなく、メカニズムをちゃんと理解したいのです。
原因としくみを理解して、ぜんぶ納得できれば、ちゃんと手放せます。そして、前進できます。
はためには「苦しみたくて苦しんでるマゾヒスト」のように見えるかもしれませんが、マゾなのではありません。「真理探究者」なんですよね。
何よりも、「自分自身のこころ(内面)を探求している」のです。
「完全に悩みぬく」ことが最短距離になる
このタイプの人は、性格を変えよう、思考法を変えよう、もっと気楽に生きられる人間になろう、と【うわべのテクニック】を身につけようとしてもうまくいきません。
考えるなって言われても、考えちゃうんです。ひと晩寝て忘れるどころか、もっと悩みが深くなったりするくらいですから(笑)。
なので、私はこのタイプの人には、
- 性格を変えようとしないでください
- 悩むのをやめようと思わないでください
- 悩んでクヨクヨしてしまう自分を悪いと責めないでください
と伝えます。
むしろ、逆です。とことん、悩みぬいてしまいましょう。途中であきらめたりせず、どうせだったら、「悩みぬく私のメカニズム」を根本からまるごと全部をあきらかにしちゃいましょう。
これを「完全にやりきった」とき、あなたは確実に進化しているし、この先出会うすべての悩みを、栄養分に変えることができるようになります。
「ドロッドロの感情」を許可して吐き出す
あなたがこのタイプの人であるなら、まず、自分のなかの「ドロドロしたネガティブな感情」を、「存在してもOK」と許可していくことから始めましょう。
- だれかのことが妬ましい。
- すごくムカつく。怒っている。
- 自分のことが嫌いだ。
- 世のなかに対して絶望している。
- 顔も見たくないくらい憎んでいる人がいる。
- 過去のことを後悔している。etc.
こういったイヤな感情を、
「私はこんなドロドロした感情を抱えている、とても人間らしい人間なのだ」
と、ありのまま見ていきましょう。
「あるものは、ある。しゃーない」と、認めるだけでも、だいぶん違います。
そして次に、それら「ドロドロしたネガティブな感情」について、紙に書いて吐き出していきましょう。
私は「紙に書いて吐き出す」方法を、よくお客様にも具体的な実践方法とともにお伝えしますが、ポイントは「吐き出す(出しきる)」なので、ほかにもあなたに合った吐き出し方(出しきり方)があるなら、それでも構いません。
- 「王様の耳はロバの耳」のように、壺などに向かって言葉で吐き出すのでもいいでしょう。(ただし一人で。だれかにグチを吐き出すのは、ここではおすすめしません)
- カラオケに行って、あなたのモヤモヤした思いを歌に乗せて大声で発散してもいいです。これもできれば一人カラオケがおすすめです。
- 悲しい映画やDVDをわざわざ選んで、涙や嗚咽とともに、体内にたまった感情を浄化させるのも良い方法です。
- イライラする感情を、ボクササイズなど格闘系トレーニングで発散させるのもいいですね。
とにかく、「出しきる」ことを心がけてみてください。
感情と心のメカニズムを知るには専門家を頼る
溜まりきった「ネガティブな感情」をある程度発散させることができたら、そのメカニズムを知る余裕が生まれてきます。
これをちゃんとおこなおうとする場合は、カウンセラー、コーチ、心理セラピストなどの、訓練された心の専門家の力を頼ることがおすすめです。
彼らは「ネガティブな感情」にはちゃんと役割があることを知っています。それらが不必要なものではなく、誰にでもあるもので、それらがギフト(贈り物)であることを知っています。
ひとりでは無理でも、専門家にガイドしてもらうことで、悩みや苦しみの「原因としくみ」が理解できるようになるのです。
それさえ分かれば、あなたは、自然と手放せるはずですから。
「絶望しきる」ことのススメ
だから、たとえばもし今あなたが「絶望感」を感じているとしたら、それをムリになかったことにしようとしたり、他のことで気を紛らわせようとしたりせず、「とことん絶望感を感じて、いったんぜんぶ吐き出してみる」ことも一つの方法だとお伝えしたいです。
安全な場所で、安心できるひとりのときに、上にあげたような方法を試してみてください。
ほかにも、破いてもいい紙を大量に用意して気が済むまで破いてみるとか、殴ってもいいクッションを気が済むまで殴ってみるなんていう方法もあります。
あなたの気が済むまで、絶望感を感じきってみてください。
気が済めば、納得感がえられます。
このように納得感を尊重していけば、それは自分を愛することにつながります。だれか専門家の力を頼ることも、自分に許せるようになってきます。
ぜひ、試してみてくださいね。